Amazon広告の入札や予算の調整に、毎日どれくらい時間を使えていますか。楽天や自社ECも担当しながらだと、Amazonの広告は最初に設定したまま、という会社も多いはずです。そこで気になるのが、広告の調整を自動で進めてくれる運用ツールです。
ブルーグースは2017年から、Amazonの運用代行を続けてきました。その経験から言えるのは、ツール選びで差がつくのは自動化の性能より「どこまで任せて、どこから自分で決めるか」だということです。この記事では、ツールの種類と料金、うまくいった例とそうでなかった例、選ぶときの基準を順にお話しします。
1. Amazon広告運用ツールでできること
Amazon広告運用ツールは、スポンサー広告の入札額や予算、キーワードの管理を自動で進めるサービスです。管理画面で手作業でもできることですが、商品が10、20と増えると、毎日すべてを見直すのは現実的ではありません。
ツールが肩代わりするのは主に4つの作業です。成果に合わせて入札額を上げ下げすること。成果の出ているキャンペーンに予算を寄せること。オート広告で注文につながった検索語を拾って手動の広告に加え、クリックばかりで売れない検索語を外すこと。そして、売上や広告費の推移をレポートにまとめることです。
この記事ではACoSという指標が何度か出てきます。広告経由の売上に対する広告費の割合で、広告費1万円で広告経由の売上が5万円なら20%です。低いほど広告の効率が良いことを示します。
2. ツールの種類と料金の目安
ツールは、どこまで任せるかで3つのタイプに分けられます。
最も多いのは全自動型です。目標のACoSと予算を入れれば、入札や予算の調整はツールが進めてくれます。手間は一番少なく済みます。
ルール設定型は、「ACoSが30%を超えたら入札を下げる」のような条件を自分で決め、その実行をツールに任せるタイプです。自社の考え方を反映しやすい代わりに、条件を考えるだけの知識が要ります。
運用判断型は、広告に加えて在庫や商品ページの状態も見て、やるべきことを示すタイプです。費用が減る調整は自動で行い、費用が増える判断は担当者の承認を待ちます。
主なツールの料金を、各社の公開情報から表にまとめました。月額1万円台から10万円程度まで幅があり、大企業向けのツールは料金を公開せず、問い合わせ制にしているところが多いです。
| ツール | タイプ | 料金の目安 | 出典 |
|---|---|---|---|
| Commerce Flow | 全自動型 | セルフ月額50,000円、プロ月額100,000円(広告費が月100万円を超えた分に5%)。1か月無料 | 公式サイト |
| Perpetua | 全自動型 | 公式サイトに料金の掲載なし(問い合わせ) | 公式サイト |
| Pacvue | ルール設定型(自動入札や在庫に連動した広告停止の機能あり。大企業・代理店向け) | 公式サイトに料金の掲載なし(デモ予約制) | 公式サイト |
| Quartile | 全自動型 | 問い合わせ | 国内販売元MBKデジタル社の記事 |
| Blue Goose Analytics | 運用判断型 | 月額11,000円(税込)から。14日間無料 | 公式サイト(筆者の会社の製品) |
料金は2026年10月時点の情報です。申し込む前に、各社の公式サイトで最新の料金を確かめてください。
3. ツールを使えば成果は出るのか
条件が合えば出ます。導入事例も公開されていて、Perpetuaの事例記事(ECのミカタ掲載)ではACoSを39%下げた例が紹介されています。ITreviewのレビューにも、手が回らず落ちていた売上が、自動化で少しずつ回復したという声があります。
ただ、ここで言う「成果」が何を指すかには注意が必要です。ACoSが下がることと、売上が伸びることは同じではありません。この違いは、5章で私たちが実際に見た2つのケースを使って説明します。
4. メリットとデメリット
一番のメリットは、担当者が忙しい日も休みの日も、広告の調整が止まらないことです。入札の見直しやレポート作りにかかっていた時間も減ります。調整の質が担当者の経験や勘に左右されにくくなるのも利点です。
デメリットは、月額の費用がかかることと、最初の目標設定を誤ると成果が出にくいことです。見落とされがちなのが、任せた分だけ社内に判断の経験が残らない点です。ITreviewにも、ツールで運用が回る分、社内の知見が大きく下がったという利用者の声があります。在庫切れや商品ページの問題といった広告以外の原因を直せないのは、どのタイプのツールにも共通する限界です。
5. 「設定して放置」の前に知っておきたいこと
目標を入れたら、あとは任せておきたい。忙しい担当者ほどそう思うはずですし、その気持ちはよく分かります。ただ、運用代行の現場では、完全に手を離したことで困った例をいくつも見てきました。
広告の効率が良くなっても、売上が伸びるとは限らない
この記事で一番お伝えしたいのがこの点です。2つのケースを比べてみてください。
1つ目は、月商100万円ほどの会社の運用を引き継いだときの話です。広告は商品ごとに設定されていましたが、ほとんどがオート広告のままでした。そのため、本来しっかりお金をかけるべき重要なキーワードに、予算がほとんど回っていませんでした。私たちは重要なキーワードに予算を寄せ、売れないキーワードへの出費を抑える運用に切り替えました。攻めの運用と守りの運用を同時に走らせたので、全体のACoSはほぼ変わりませんでしたが、1年後には月商が300万円まで増えました。
2つ目は、ある全自動型のツールで広告を運用していた時期の話です。そのツールがキーワードごとにCPCの調整などを自動で実行してくれたので、ACoSなどの数字は良くなりました。ところが、全体の売上は増えませんでした。ツールは無駄を削るのは得意でも、「この重要なキーワードには、効率が多少落ちても投資する」という判断はしてくれなかったからです。
効率を上げる守りの運用は、ツールに任せやすい仕事です。一方、どのキーワードで勝ちにいくかを決める攻めの運用は、売上の伸びを左右するのに、全自動では抜け落ちやすくなります。ツールを選ぶときは、ACoSだけでなく、総売上に対する広告費の割合(TACoS)や売上そのものを確認できるかも見てください。
知らないうちに広告費が増えることがある
全自動型のツールは、目標の範囲内で売上を伸ばそうと、入札や予算を引き上げることがあります。月末の請求を見て初めて気づく、ということがないように、予算の上限を決めておくか、費用が増える調整だけは承認制にできるツールを選ぶと安心です。
売れない原因が広告以外にあることも多い
在庫が切れている商品に広告を出しても売れません。商品ページの写真や説明が弱ければ、クリックされても買われません。広告の数字だけを見るツールは、こうした原因に気づけません。ツールがそこまで見ないなら、在庫と商品ページは月に一度でも自分の目で確かめてください。
社内に判断の経験が残らない
任せきりにすると、なぜその調整をしたのかが社内に残りません。担当者が替わったときや、ツールをやめたときに困ります。調整の理由を画面で読めるツールなら、理由を読んで決めることを繰り返すうちに、担当者にも判断の勘所が身についていきます。
6. 純正機能・ツール・運用代行のどれを選ぶか
どれを選ぶかは、会社の規模より、Amazonに使える時間と、費用が増える判断を社内の誰が下すかで決まります。
| 選択肢 | 月の費用(広告費以外) | 自分の作業 | 向いている状態 |
|---|---|---|---|
| Amazon広告の管理画面のみ | 0円 | 入札・予算・キーワードをすべて自分で調整 | 週に数時間Amazonに使え、広告の知識がある |
| 広告運用ツール | 1万円台〜10万円程度 | 目標の設定と、提案や結果の確認 | Amazonに使える時間は少ないが、判断は社内で持ちたい |
| 運用代行 | 数万円〜数十万円 | 報告を受けて方針を決める | 時間も知識も社内にない。費用をかけても任せたい |
迷ったら、まず週に何時間をAmazonに使えるかを考えてください。1時間も取れないなら、管理画面だけでの運用は続きません。次に、費用が増える判断を下せる人が社内にいるかどうかです。いればツールで十分に回せますし、いなければ運用代行を検討する価値があります。最後に費用です。Commerce Flowの比較表では、代理店の手数料の例として広告費の20%が示されています。広告費が月30万円なら月6万円です。この金額と、ツールの月額に自分の作業時間を足したものを比べてみてください。
7. 失敗しない選び方5つの基準
ツールを比べるときに確かめてほしいことを、5つにまとめました。2〜4は、5章でお話しした失敗を避けるための基準です。
- 日本のAmazonに対応し、日本語で相談できるか。海外製でも、日本の代理店がサポートしている場合があります。
- 費用が増える調整を誰が決めるか。予算の上限や、承認制の設定ができるかを確認します。
- 攻めの運用を反映できるか。重要なキーワードに予算を寄せるといった判断ができるか、TACoSや売上で成果を確かめられるかを見ます。
- 広告以外も見てくれるか。在庫切れや商品ページの問題まで分かると、広告だけでは届かない原因に手を打てます。
- 料金・契約期間・解約の条件が明確か。無料で試せるか、最低契約期間があるかも確認します。
8. 導入の流れと、効果が出るまでの期間
多くのツールは、申し込みから数日で使い始められます。無料期間のあるツールに申し込んだら、Amazonのアカウントと連携します。連携はAmazonが用意している仕組みで利用を許可する操作で、パスワードを渡す必要がないのが一般的です。目標のACoSや予算の上限を決めたら、まずは一部のキャンペーンから任せてみてください。2〜4週間ほど結果を見て、問題がなければ任せる範囲を広げていきます。
効果の判断には、少なくとも1か月はかけてください。Commerce Flowのよくある質問でも、1か月程度で効果が出始めることが多いとしています。広告の数字は日によってぶれるので、数日で判断すると見誤ります。売上の伸びまで見るなら、さらに長い目が必要です。5章の1つ目のケースでも、月商が3倍になるまでに1年かかりました。
9. よくある質問
Amazon広告の管理画面だけでは足りませんか?
週に数時間を広告の調整に使えるなら、管理画面だけでも運用できます。ツールが役に立つのは、その時間が取れない場合です。
ツールを入れると、広告費は増えますか?
設定しだいです。全自動型では、目標の範囲内で広告費が増えることがあります。予算の上限や承認の仕組みがあるかを、導入前に確かめてください。
ベンダーセントラル(メーカー直取引)でも使えますか?
ツールによって違います。ベンダーの場合は、対応しているかを必ず事前に確認してください。
途中でやめることはできますか?
契約の縛りがないツールも多くあります。たとえばCommerce Flowは契約期間の縛りを設けていませんが、効果の判断のために3か月以上の利用を勧めています。
10. まとめ
広告運用ツールは、忙しい担当者に代わって広告の調整を続けてくれます。ただし、効率を上げることと売上を伸ばすことは別の仕事です。どこまでをツールに任せ、どこからを自分で決めるか。その線引きができるツールを選んでください。
筆者がBlue Goose Analyticsを作った理由
ここからは、筆者の会社の製品の話です。Amazonの広告運用の重要性は年々高まっていると感じています。ところが、私たちが理想とする運用をしてくれるツールは見つかりませんでした。その運用を手作業で続けると工数が膨大になり、このままではすべてのお客様に最善のサービスを届けられなくなる。そう考えて作ったのが、運用判断ツール「Blue Goose Analytics」です。
この記事でお話しした守りと攻めの考え方を、そのまま仕組みにしています。費用が減る調整は自動で行い、費用が増える判断は担当者の承認を待ちます。広告のほかに、子ASINごとの推奨納品数や商品ページの改善案も「やること」として示します。セラーセントラルとベンダーセントラルの両方に対応し、料金は月額11,000円(税込)からです。14日間の無料期間があり、契約期間の縛りはありません。詳しくはBlue Goose Analyticsの公式サイトをご覧ください。
広告の運用ごと任せたい場合は、ツールの利用料を含む広告運用代行(月額110,000円・税込)もご用意しています。
筆者について
及川謙一(ブルーグース合同会社 代表)。2011年から2017年まで、アマゾンジャパンのリテール部門でWebプロデュースマネージャーとして売り場づくり・広告・協賛を担当しました。2017年にブルーグース合同会社を設立し、Amazonの運用代行で100社を超える企業を支援しています。著書に『Amazon出店の王道』(技術評論社)があります。

