Amazonベンダー運用の外注範囲|社内に残す業務と、任せられる業務、取引条件交渉の備え

Amazonベンダー運用の外注範囲

メーカーがAmazonに商品を卸すベンダー取引では、発注への回答、出荷、請求、商品ページ、広告、そして年に一度の取引条件交渉と、仕事が複数の部署にまたがります。営業部門がAmazonとの取引を担当し、ECの専任者がいない会社では、どこまでを外部に任せられるのかが分かりにくいという相談をよく受けます。

この記事では、ベンダー運用の業務を「社内に残すもの」と「外部に任せられるもの」に分けて整理します。書いているのは、2011年から2017年までアマゾンジャパンのリテール部門でPC、文具、楽器などのカテゴリーを担当し、ベンダーと向き合う側にいたブルーグース代表の及川です。ベンダー取引そのものの仕組みは、Amazonベンダーセントラルとはで解説しています。

外注を考える前に知っておきたい、Amazon側の評価軸の変化

私がアマゾンジャパンに入った2011年ごろ、Amazonは国内でのシェア拡大を最優先にしていました。赤字になってでも売上を伸ばす施策に振り切っていた時期で、ベンダーへの協賛金の要求もそれほど厳しくありませんでした。

その後、本社の方針で利益を優先する場面が少しずつ増え、私が退職した2017年には、ほぼ完全に利益の改善に振り切った方針になっていました。どのベンダーとの交渉でも「どう利益を改善するか」が中心の論点になり、この流れは今も続いています。

ベンダーマネージャー(Amazon側の担当バイヤー)が最も重視している指標はNet PPMで、この指標にも利益優先への変化が表れています。Net PPMは、Amazonがその商品を売ったときに、仕入れ価格や協賛金などを差し引いて最終的にどれだけ利益が残るかを示します。Net PPMが低いメーカーは発注を絞られやすく、改善が見込めないと新商品の取り扱いにも慎重になられます。これは担当者個人の好みではなく、担当者の評価の決まり方によるものです。

そのため、ベンダー運用を外部に任せるなら、売上を伸ばすことだけを目的にするのでは足りません。Amazonにとって利益の出る取引を保ちながら、自社の利益も守ることを目的に置く必要があります。

業務ごとの分担の目安

業務分担の目安理由
発注書への回答社内に残す在庫と生産の計画を知っているのは社内だけで、回答の誤りは取引の評価に響くため
出荷と納品社内(物流会社)に残す自社の物流の流れに組み込まれているため
請求と支払いの確認社内に残す経理の処理と直結しているため
商品ページの改善、A+コンテンツ外部に任せられる専門の知識が要り、成果に直結する一方、社内に担当者を置きにくいため
スポンサー広告の運用外部に任せられる毎日の調整が必要で、兼任の担当者では手が回りにくいため
レポートの定点観測と月次のビジネスレビュー資料外部に任せられる週次の集計と資料化は作業量が多く、型を決めれば外部で回せるため
取引条件交渉の準備外部と分担するデータの整理と提案の組み立ては外部、条件の最終判断は社内が持つため

表の下2つは、外注の範囲として見落とされがちです。最近は、担当のベンダーマネージャーと連絡が取りにくい、年に一度も話せないというメーカーも珍しくありません。その状況でも、注文分の売上、商品ページの閲覧数、Net PPM、カートを他の出品者に取られた割合の4つを月次で1ページにまとめ、課題と提案を添えて送り続けると、「データで話せるメーカー」と見られるようになり、Amazon側の対応が変わってきます。この定点観測と資料づくりは、外部に任せやすい仕事です。

取引条件交渉で外部の力を借りる場面

四半期や年次のビジネスレビューでは、Amazonから大きく3種類の要求が出てきます。仕入れ価格の引き下げ、リードタイムや最低発注数量の見直しといった物流面の負担、そしてプライムデーなど大型セールに向けた協賛金の増額です。すべてを受け入れれば利益が消え、断り続ければ発注を絞られる恐れがあるため、どこまで受けるかの判断軸が要ります。

こうした交渉では、感覚ではなくデータで話すことが大切です。私が支援先と交渉に臨むときは、次の3つを準備しています。

  1. 商品ごとのNet PPMの推移:これ以上の値下げで供給が続けられなくなる水準を、数字で示す
  2. Amazonの運営コストを下げる提案:カートン単位での納品や梱包の改善など、値下げの代わりに差し出せるもの
  3. 自社の貢献度:カテゴリー全体の閲覧数や売上の伸びに、自社の商品がどれだけ寄与しているか

Amazonの担当者は社内の指標で評価されているので、同じ指標で話すメーカーの言葉には耳を傾けます。データの集計と提案の組み立ては外部に任せられますが、どの条件なら受けられるかという最終判断は、自社の原価と経営方針を知る社内にしかできません。

外注しても社内に残る判断

商品ページや広告を任せても、次の3つの判断は社内に残ります。外注先からの提案を受けて決める立場の方を1人決めておくと、話が早く進みます。

  • どの商品をAmazonで伸ばすか(量販店など他の販路との価格の兼ね合い)
  • 在庫をどこまで積むか(セールや需要期の前の発注への回答)
  • 取引条件をどこまで受け入れるか(原価と利益目標からの逆算)

外注先を選ぶときに確認したいこと

Amazonの支援会社の多くはセラーセントラルを前提にしています。ネットで見かける運用ノウハウも大半がセラー向けで、ベンダーには使えない分析機能や指標を前提にしたものが少なくありません。ベンダー運用を任せる場合は、次の3点を最初に確認してください。

  1. ベンダーセントラルでの運用実績があるか
  2. Net PPMなど、ベンダー特有の指標で広告や施策の良し悪しを判断できるか
  3. 取引条件交渉の準備まで支援の範囲に含められるか

また、ベンダーセントラルへのアクセスは、担当者ごとのユーザー権限で付与し、外注先とパスワードを共有しない形にしておくと、契約の終了時にも安全に整理できます。

ブルーグースのベンダー運用支援

ブルーグースは、ベンダーセントラルとセラーセントラルの両方で、商品ページの改善と広告の運用を同じ水準で行っています。月次のビジネスレビュー資料の作成や、取引条件交渉に向けたデータの整理もお手伝いします。

商品ページから広告までまとめて任せたい場合はAmazon運用代行、広告だけを任せたい場合はAmazon広告運用代行、社内で運用しながら交渉や施策の判断を相談したい場合はAmazonコンサルティングをご覧ください。

ベンダー取引の運用についてのご相談は、Amazonへの年間の卸売額の目安と、扱っている商品数をお問い合わせフォームからお知らせください。ご相談は無料です。

この記事を書いた人

及川謙一